1800-01-01から1年間の記事一覧

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「自由意志について考えること」の心理学 ダニエル・デネット原文 (PDF) : Some observations on the psychology of thinking about free will 僕たちは自由意志を持っているのだろうか、いないのだろうか?自由意志に関わる問題はハードで、かつ重要だ。そ…

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1984年に僕は自由意志に関する本 『Elbow Room: The Varieties of Free Will Worth Wanting (A Bradford Book)』 を上梓した。その中で僕は、こういった恐れはもっともではあるけれど、誤りであることを示そうとした。僕たちは望むべき価値のある、あらゆる…

p3

自由意志に関する二冊目の本で僕は、望むに値する様々な自由意志は、事実、カバンに詰まった自然の仕掛けから成り立っていて、それは遺伝的・文化的な進化によるものであることを示した。『自由は進化する』 (2003) によれば、自由意志を説明できるのは、進…

p4

遺伝子と文化の進化のコンビネーションがホモサピエンスを作り出した。そしてそのような特徴をはっきりと持っているのは、地球上では、いまのところ、ホモサピエンスだけなのだ。自分自身の選択に根拠があるのか、自分自身が好んでいると気付いたものを好む…

p6-7

本当の自由意志を理解する鍵は、奥深くにある何か特別な塊の中ではなく、文化に囲まれ、社会化され、相互作用し、認識しあう、主体としての人間の無数の関係の中にこそ自由意志が宿ることを知ることだ。紐を操る人形師に全ての力を詰め込んでしまうデカルト…

p7-8

人間のあらゆる行動や思考は、経験されている現在の環境、人生の歴史全て、そしてもちろん当初の遺伝的資質の相互作用から生じる、現在の脳と身体の状態から引き起こされるのだ、ということを科学者たちは証明してきた。これらの事実から我々は本当は自由意…

p8-10

そうだ、僕たちは自由意志をもっている。プロザック (とかその他のドラッグ) を来世のために一日一回飲みさえすればね。 そうだ、僕たちは自由意志をもっている。機械により近づいて見たいときに横目で見る技をマスターしさえすればね。 しかし、問題はゴル…

ジャッケンドフ先生が語る言語・脳・進化

ことのはのいしずゑ 〜脳意味統語進化〜 Foundations of Language: Brain, Meaning, Grammar, Evolution作者: Ray S. Jackendoff出版社/メーカー: Oxford University Press発売日: 2003/11/06メディア: ペーパーバック購入: 1人 クリック: 9回この商品を含む…

p19〜

第2章 心理現象としての言語 2.1 "心"とは何を意味するか? ノーム・チョムスキー『Aspects of the Theory of the Syntax』(1965) の注目すべき第1章において提唱された生成文法の検討課題は、そのほとんどが35年にも渡り無傷なまま残されることになった。こ…

p20:3〜

認知科学に浸透し類似の問題を引き起こす言葉は「表象」以外にも存在する。例えば、図1.1を心的表象もしくは脳機能の「記号」理論 symbolic theory の一部として語ることはよくあることだ。この図の中の音素 b だとか 範疇 NP だとかの表記記号は心の中の「…

p21:1〜

それゆえ我々は、「図1.1 は話者の心の中の認知構造をモデル化したものである」というように解釈を修正する。しかし依然として問題が残る。「心」 mind という言葉だ。心とは伝統的には意識と意志の座として理解されてきた。「心身問題」 mind-body problem …

p21:28〜

(ある人々は「記号下」 subsymbolic と呼ぶ)「機能的」 functional な構成・活動を理解する標準的な方法はコンピューターにおけるハードウェアとソフトウェアの区別をあてはめることだ。脳はハードウェアに例えられるのに対し、心はソフトウェアとして捉え…

p23〜

仮に機能的構成と神経における実装との関係をこのように理解したとしても、機能的構成理論の有用性に関しては一枚岩の攻撃がなされてきた。近年では理論への攻撃は哲学者からではなく、神経科学と計算論的モデリングのあるコミュニティーからなされている(例…

p23:37〜

2.2 言語学的記述を心的にどう解釈するか? そのような代替案とはどのようなものか。認知構造が神経的基盤の上に成り立つことは誰も否定しないだろう。そして神経がどのよう言語の理解と産出を成し遂げるかを理解することの重要性も誰も否定しないだろう(と…

p24〜

たとえば b という表記は「音素選択」 phoneme choice の下位空間における位置を符号化している。そして、音韻論的に異なる素性表記は、下位空間における子音性、有声性、調音位置といった下位次元を符号化しているのである(図1.2)。NP という表記は「統語範疇…