beautiful day(s)!

 


 
ある御仁によると、朝霧JAMの感想ブログはどこもこのタイトルであるらしく、僕も慣習に従ってみた。
 
10月7日(土)
 
前日までは台風がどうなるか、冷や冷やものだったのだけれど、土曜日の朝には嘘の様な秋晴れ。先日の尾瀬もそうだったけれど、台風っていうのは、良いほうにも、悪いほうにも、極端に天気を揺らすのだ。今年は FUJIROCK から天気に恵まれ過ぎで、いつかひどい目にあうんじゃないかと、そっちのほうが怖い。
 
kmsh が朝7時半ごろ、レンタカーで迎えに来てくれ、東名高速で西へ。BECKFATBOY SLIMSOUL FLOWER UNION や、今回のメンツとは関係のない BGM ばかり流して盛り上がる僕ら。富士が徐々に現実感を持って迫ってくる。東京や横浜から眺める富士は、青く端整で、夕日と一緒に小さくフレーム収まって、「風呂屋のペンキ画、芝居の書きわり」なのだけれど、富士は近寄れば近寄るほど、手に負えなくなっていく。溶岩流の跡が不気味にうねり、山肌には樹も育たず、赤い土を晒している。音楽もそういうものなんだと、思う。だから、生の音を求めて、秋も深まるこの季節になっても、のこのこ出かけるのだ。
 
グリーン・パークの駐車場に降り立つと、もう、空気が東京とは全然違った。富士山と同じ空気を吸っている、そんな気分だ。シャトル・バスに乗って会場へ。rainbow ステージに広がる色とりどりのテント、テント、テント。弥が上にも心が昂ぶる。僕らは moon shine ステージから少し離れた B サイトにテントを張る。離れたと言ってもほんの 1、2 分で辿り着く距離だ。テントを手早く張って、途中で買い込んだビールで乾杯し、ぶらぶら歩いていくと、ちょうど一組目のクラムボンが始まる。
 
rainbow stage

 
ぶらぶら歩いているだけでクラムボンの音と出会えるなどという、とてつもなく贅沢なところに来てしまった。まさにクラムボンのために用意されたようなステージ、天気、景色。CD で聴くよりも遥かにカラフルなイメージが湧き出して辺りを染めていく。これで幸せにならない人がいるだろうか。ミトと原田郁子の MC も全く気合いが抜けていて、最高。小瓶に入ったストレートのバーボンがみるみるうちに減っていく。Small Circle of Friends の「波よせて」もカバー。ミトのラップ、流れ流れて、もうどっぷり朝霧JAMに浸かる。
 
二杯目のビールを求めてうろついていると、kmsh の大学時代の友達Uすけと出会う。幸せそうな顔しているなあ。俺もこんな顔しているんだろうな。合流してみんなでビールの列に並んでいると、後ろになんと、くるりの佐藤ノイズ・マッカトニー社長とドラムの Cliff Almond が! kmsh が機転を利かせて、さっき取ったポラロイド写真にサインしてもらえることに。佐藤さん、「クリフは世界的ドラマーだから、彼のサインのほうがずっと価値あるよ」なんて言いながら、THE QRLI とサイン、すごく親切な人だった。クリフは Michael Camilo などとも共演する、ほんとにすごいドラマー、小柄で愛想がよい。
 
二人のサインで有頂天になりながら、物販コーナーなどを物色していると、馴染み深い "Nowhere Man" のメロディー。なんと Ron Sexsmith が歌っている!結局、リハで一曲まるごとやってくれました。すげーサービス。
 
トイレに行って戻ってくると、なんだか仲間が一人増えている、と思ったら、今度はくるりの達身! なんだ、この3連コンボは! というわけで、岸田以外のくるりメンバーのサインが手に入った。達身も気さくだったなあ。
 
そして大好きなロン・セクスミスのステージ。うわー夢みたいだ。この人の優しくシャイな歌の数々には感謝しても感謝しきれないほど、恩がある。この柔らかいメロディーと壊れそうな声に包まれて、今まで何とかやってきたのだ。繊細な曲ばかりだから、メンバーと息を合わせて、本当に本当に大切に音を紡いでいく。後ろから少しひんやりとした風が富士の斜面を下ってきて、ロンの髪をなびかせる。大好きなロンの初ライブが朝霧でほんとに良かった!僕の思い入れも並々ならぬ "Secret Heart" もやってくれて大満足。Uすけもこの曲が聴きたかったらしく、終了後、二人で満面の笑み。
 
流れに乗って、今度はロンのサイン会に。kmsh も入れて3人でポラを撮って、そこにサインをしてもらうという、最高に豪華な展開に。ロンは kmsh のポラロイド・カメラに興味を持ったみたいで、色々質問してきた。握手してもらったけれど、なかなかもちもちしていたぞ。
 
rainbow stage

 
というわけで、ロンとくるりのサイン入りポラ。抽選で二名の方に・・・あげるわけがない。
 
日が暮れだしたころに元ちとせ。夏も代々木体育館で聞いたのだけれど、音の広がりが全く違う。とてものびのびと気持ち良さそうに歌っていて、こちらも嬉しくなってくる。キーボードはやはり、KYON。「はなだいろ」はやっぱり名曲だ。しかし、誰もが聴きたいであろう「ワダツミの木」は頑なにやらないのだな。寒くなってきたのでセーターを着にテントまで戻る。気軽にテントと行き来できるのがいい。空っぽになったバーボンの空き瓶に焼酎を詰めなおして再出発。
 
moon shine では田中フミヤの INDIVIDUAL ORCHESTRA。薄闇の中で寡黙に Mac を操る。富士の圧倒的な風景に、静かに溶け込んでいく音。リズムが徐々に体に染み渡っていく感覚が心地よい。ラストは過去のユニット HOODRUM をセルフカバー。
 
続く、RYUKYU DISKO はオープニングこそ島唄をフィーチャーするも、以降はかなり禁欲的でミニマルなスタイル。あげるかと思わせてじらす、じらす。堪えきれずにくるりへ向かう。朝霧に出かける前はくるりは何度も聴いたし今回は他のアーティストを見るか、と思っていたけれど、サインをもらった手前、聴かなければ。
 
リハで「ロックンロール」を一部やっただけで、すごい盛り上がり。「ワンダーフォーゲル」、「ハイウェイ」、「東京」とベストな選曲で熱狂の渦に巻き込まれ、なんとびっくりの「惑星づくり」で大いに陶酔。即興の曲も面白かったなあ。「FUJIROCK に富士はない、選ばれたものだけが朝霧に集う」みたいな歌詞で。岸田もいつもの斜に構えたところがなくて、すごく機嫌が良い。振り返ると満月と富士山。この景色を見ながら演奏するのは本当に気持ち良いだろうな。楽しすぎて最後の「HOW TO GO」まで記憶がないや。これだけ楽しんで贅沢なようだけれど、Cliff のドラムは確かにタイトでテクニカルなんだろうけれど、僕はやはり、クリストファーのずこばこした豪快な音が好みなのだった。
 
くるりではさんざ飛び跳ねたけれど、全く汗をかかない。これが夏フェスだったら、汗だくだくで、シャワーを戻りにキャンプ場まで戻るのにまた一苦労。秋フェス、素晴らしい。くるりの後はやたらとピースフルな Justice をポーク・ストロガノフをむしゃぶりつつ。ポークも皿の上で踊る。
 
続いてUすけイチオシの Michael Franti and Spearhead を聴きに再び Rainbow Stage へ。
これ、すごい。何ともエネルギッシュなステージング。喜びも怒りも交じり合って真っ直ぐ振動が胸に届く。なんで今まで知らなかったんだろう。ボブ・マーリーが乗り移ったような(実際フィーチャーしていた)曲もあれば、アメリカの帝国主義を憂う政治的発言の後に U2 テイストの曲をやったりもする。でも、どの曲も彼の内側から煮えたぎって噴出されたものであることは、顔も見えない遠くから聴いていてもはっきりと解かる。すごい強烈なものを見てしまった気がする。
 
Moon Shine に移動するもマイケル・フランティの熱が冷めるどころか Erol Alkan のインテリジェントかつテンションの高いツボを押さえた選曲で、ますます発熱。やばい。

(続く)