しょうかっこうからやりなおし。

End Of The DREAMS

End Of The DREAMS

友人から借りた金を手に、夕暮れコンビニに向かい、あさましくも、嬉々として肉まんを店の前で頬張っていると、偶然通り過ぎたフラバルスさんが声を掛けてくださった。先日もこのあたりで出会ったのだが、今日は弟さんも連れておられた。良い弟さんに見えた。私はしどろもどろになって「よいお兄さんをお持ちで羨ましいですね。子守唄を歌ってもらえますね」などとわけのわからないことを口走ってしまった。
私は大学のバンド・サークルに所属していたのだが、集団生活の苦手な私は、結局、数人の気の合う仲間たちとつるみ、不毛なコピー・バンドに明け暮れるだけで、サークルに馴染むことは、なかった。フラバルスさんはサークルの先輩で、歌も旨く、皆からの信望も厚かった。フラバルスさんは何故だか、幾度か私たちのバンドを褒めてくださり、それは、恐らく私たちのバンドが、サークル内の面倒な人間関係などとは無縁に、下手ながらも心から楽しんで無邪気に音と戯れていたからだと思うのだが、兎に角、私はとてもそれが嬉しかった。

サークルから私が離れて 4 年が経って、私は相変わらずやくざな学生をやっている。一方、フラバルスさんはメジャーで大活躍中であり、Summer Sonic にも出演し、名盤『End Of The DREAMS』には草野マサムネ氏を始め錚々たる方々が賛辞を寄せ、ジャケットは、あの、本秀康氏である。当然のことではあるが、凄いことに、なっている。それでも私のことを覚えていてくださり、声をかけてくださるのは、ありがたいことである。友人の親切にしろ、偉大な先輩とのちょっとした会話にしろ、こういった小さな幸せというのは、旅に出るまでもなく、すぐ身の回りでこそ出会えるもので、それに気付けた意味でも、やはり、旅に出て良かったと思うのだった。