都市の模型展(森都市未来研究所)


2度目だが、それでもやはり興奮してしまう。
藤子・F・不二雄キテレツ大百科 (2) (てんとう虫コミックス)』に、紙の模型で理想の街を作るエピソードがあって(もちろん主人公たちは小さくなってその中で遊ぶのだ!)、小さい頃、自分でも試したのを思い出す。それ以来、建築家になることを何度も夢見た。そして建築を諦めた今、幼い頃にはとても作ることの出来なかった精緻で広大な模型が目の前に広がる。
模型となったのは展示順にニューヨーク、東京、上海。いずれもビルの立ち並ぶ大都市である。しかし、模型にして一目に各都市を展望するとその性格の違いは明白だ。高層ビルが整然と織り成すように並ぶニューヨーク、中層の建築がだらだらとどこまでも続いていく東京、奇抜かつ巨大なポストモダン建築の展示場といった趣の上海。模型横の大画面には東京・ニューヨーク・上海の生活事情が比較されており興味深かった。ニューヨークの住みづらさ、過剰消費は東京以上のようだ。
森ビル(株)が、本当の意味で日本の街並みを慈しみ、その美を向上させているとは思わないが、潤沢な資金と最先端の技術力で完成させたミニチュアは、その倍率とは裏腹に圧倒的な迫力で迫ってくる。地図を眺めて景色や人の生活を想像するのが好きな人は興奮すること間違いなしである。特に、東京の模型では、日常の記憶に刻まれている地上からの視点と、模型を鳥瞰する視点とが交じり合い、模型の中に吸い込まれるような酩酊感を味わえる。ニューヨークのミニチュアを眺めらがらハリウッド映画のシーンを脳内で再生するのも楽しい。
 
会場では押井守が監修を手掛けた短編、『東京静脈』および『東京スキャナー』の上映も行われていた。
東京スキャナー』は東京の街並みをヘリコプターから撮影したもの。特に面白みはなく、押井守らしいSFっぽい演出(ターゲットの建物にロックオンしてSCANする)が見られる程度。Hi-Vison撮影ということだったが、プロジェクターの性能が悪く、画質は荒かったのが残念。
東京静脈』は、東京の「動脈」首都高速の対比としての「静脈」神田川を遊覧しながら撮影したもの。全編見ることは出来なかったのだが、首都高の高架下を流れ、まさに日の当たらない運河をゆったりとたゆたう映像は、東京を眺める新たな視点の提示として面白かった。川が重要な交通手段であったバンコクを思い出す。
アニメ監督が実写で川の風景を撮る前例としては、高畑勲らの柳川もの*1があり、見比べるのも面白そうだ。
 
好評につき11月23日まで開催延長とのこと。

*1:製作:宮崎駿、脚本・監督:高畑勲『柳川掘割物語』 柳川堀割物語 [DVD]