女性天皇に真に反対しているのは誰だろうか?

http://www.asahi.com/national/update/1124/TKY200511240412.html
僕は皇室に何の私的感情もない。TVの皇室特集などは鬱陶しいだけである。天皇制は廃止しても構わない。だが、廃止なら廃止で、それなりの重みを持った決断となることを自覚すべきだと思う。
先日、小泉首相の私的諮問機関「皇室典範に関する有識者会議」 (吉川弘之座長) が、「女性及び女系天皇」を認め、皇位継承順位は男女を問わない「第1子優先」とする報告書を首相に提出した。
女性・女系を認めた理由として報告書は、「世襲による継承を安定的に維持する」ため、としている。しかし、これは本末転倒な議論である。確かに「世襲による継承」が長きに渡って続いてきたことは間違いではない。しかしここで「有識者」らが「安定的に維持」しようとしているのは虚妄の価値である。なぜなら天皇家の存在価値とは、正確に言えば、「男系による継承」によって形作られてきたものであるからだ。つまり、女系天皇が誕生した時点で天皇家の存在意義は新たに書き換えられるのである。「有識者」らは何か重大なものを守るように見せかけて、その守るべきものを足元から掬おうとしているのではないだろうか。
維持するためだけの制度、制度のための制度、と変わり果てた皇室は、ますます自律性を失い、道具としてのみ作用するようになるのではないか。「親しみやすい皇室に」との方針は、まさか皇室とヨン様を同レベルに扱おうとでも考えているのか。
男女平等の社会の原理に従うべきだ、との意見はそもそもナンセンスだ。一般社会の原理の通用しない特異点として、皇室は存在するのである。そして特異点である限りにおいて皇室は存在を認められている。
どのみち国民が「女性天皇」と「女系天皇」の区別もついていない様な状況で、なし崩し的に皇室典範を書き換えるのは時期尚早としか思えない。三笠宮寛仁氏 (敬称は殿下とするべきなのでしょうが) の意見も、意図的にかは知らないが、強固な「女性」天皇反対論として扱われており、センセーション重視の報道のあり方には失望したものである。三笠宮寛仁氏が守ろうとしているのは、あくまで男系の伝統である。そして僕も、仮に皇室を存続していくならば、男系維持が最も相応しいあり方だろうと思う。
国民を、それという自覚なくして、ある方向へと誘導していくようなやり口は (それこそ伝統的ではあるが) うんざりするものだ。