『さよなら ナム・ジュン・パイク』

会場: ワタリウム美術館 (オフィシャルサイト)
スケジュール: 2006年06月10日 〜 2006年10月09日
住所: 〒150-0001 東京都渋谷区神宮前3-7-6
電話: 03-3402-3001 ファックス: 03-3405-7714

今年初めに亡くなったメディア・アートのパイオニアの回顧展。ブラウン管テレビを使った作品が所狭しと溢れかえっていた。
古ぼけたテレビの空っぽの筐体の中で蝋燭の炎が揺らめく作品(『キャンドルTV』)は、とても優しい。テレビとは結局、ガラスに塗られた蛍光体に電子がぶつかることで生まれる幻を楽しむ機械なのだけれど、その幻影性を皮肉るのではなく、むしろ暖かく懐かしいものとして表現している。単なる電磁気現象の中に多種多様な幻を見出し、安らぎを覚える、僕たちの認識のあり方が、蝋燭の炎によって逆に照射される。
また、インターナショナルな活躍を見せた彼は、ヨーロッパとアジアを包含する「ユーラシア」というイメージを大切にしたアーティストでもある。ユーラシア大陸各地の雑多な生活雑貨と映像を、大陸を横に走る道に添って配置する作品(『ユーラシアン・ウェイ』)は、国境によって色分けされた世界地図を眺めるよりも、よほど「ユーラシア」を強く信じさせる。おもちゃ、楽器、民族衣装、切手、靴…、「生活」という次元での繋がりがダイレクトに伝わってくる。
チケットは期間中、何度も使えるパスポート制という良心的なシステム。4階のビデオブースが混雑していてあまり見られなかったので、また足を運びたい。黒人ハードコア・バンド Bad Brains と共演した映像にはびっくりした。『マルホランド・ドライブ』のオープニングのダンスシーンとそっくりの映像もあった。リンチも直接影響を受けているのだろうか?Youtube でもナム・ジュン・パイクの作品がいくつか見られるみたい。