Laura Nyro『New York Tendaberry』(1969)

              ニューヨーク・テンダベリー
朝、いつもより少し早く家を出る。冷たい空気と暖かな日差しが心地よい。このぐらいの気候が一番すごしやすい。寒さに身を屈めて歩くのも良いものだけれど。
ローラ・ニーロ、朝に聴くものではない。夜中、部屋の電気を消して、新宿の灯りでも眺めながら聴くのがよいのだろう。生音でここまでひんやりとした情景を呼び起こすのもすごい。このアルバムの録音期間中、ローラ・ニーロは毎晩、馬車に乗ってスタジオに現れたらしい。孤高。どれだけ彼女が声を張り上げても、静寂が顕わになるだけである。切れ味の鋭い声と有機的に絡み合うがピアノが主役。感情の高下と寄り添うようにテンポは自由に移ろう。彼女の歌とピアノの録音後に、重ねて録ることになったバンド及びストリングスは大層苦労したという。
独りになりたい夜に。