愛撫を聴く脳②

愛撫を聴く脳①からの続きです。

Integration of Touch and Sound in Auditory Cortex
Christoph Kayser, Christopher I. Petkov, Mark Augath, & Nikos K. Logothetis
Neuron (2005) vol.48 373-384

昨日疑問に感じていた、高次の領域での活動ですが、どこにも見られなかったようです。つまり、どの連合野でも有意な活動は見られなかったにも関わらず、聴覚野においてのみ、聴覚と触覚の統合による有意な活動が起こっていたと。
また、先行研究では時間的には聴覚野の統合が連合野の統合に先行する、という実験があるそうで。今回は時間分解能より空間分解能を優先して、確かめた形ですね。う〜む、なかなかしっかりした結果のようです。さすがロゴセティス (この天才に関しては、面白いエピソードがあるので、後日書きます) 。
 
さて著者らは、この聴覚野における、触覚に対する反応は、体性感覚野、視床枕、視床などからのフィードフォワードの入力によるものだろう、としています。そして聴覚野の後方 caudal area では体性感覚との統合による "where"の処理が行われているとしています*1。このような低次な段階での感覚統合が生じることで、各性質をばらばらに知覚するのではなく、一つの対象に関連付けた認知を行うことができると著者らは考えています。

いかに諸感覚の各情報を関連付けるか、というのが認知科学の重要な問題 (Binding Problem) なのですが、この論文のようなデータに拠れば、随分シンプルに解決できるような気がします。実際は、そうそう簡単な問題ではないので、これで納得しきらずに、考え続けて行きたいと思いますが。

*1:視覚では脳の腹側を通る "what" の経路と 背側を通る "where" の経路の二つの情報の流れがあると考えられています