息子のまなざし [DVD]

ある日、職業訓練所で大工仕事を教えているオリヴィエのもとに、フランシスという少年が入所してくる。他人を受け入れないオリヴィエと、他人に受け入れられたいフランシス。何故、オリヴィエは密かに、そして執拗にフランシスの動向を追うのか？何故、オリヴィエはフランシスに怯えるのか？次第に二人の距離は縮まり出すが、二人の過去が明らかになった時・・・映画は衝撃的な結末を用意する。　　（オフィシャルサイトより）

　
現在、上映中の『ある子供』が好評の、ジャン＝ピエール＆リュック・ダルデンヌ監督による2002年作。「赦し」をテーマにした極度に抑制的な作品。ダルデンヌ兄弟の前作『イゴールの約束 [DVD]』『ロゼッタ [DVD]』でも好演していた俳優オリヴィエ・グルメがそのままの役名で登場することからも、兎に角オリヴィエに焦点を当てて撮りたかった監督の意向が伺える。
　
ハンド・カメラでぎりぎりまでオリヴィエに接近して彼の表情を捉える。一人称以外を拒むようなカメラワークは、フランシスの些細な言動がオリヴィエの頑なな表情の上に生み出すズレを一瞬一瞬捉える。このような手法は方法論的には正しいのかもしれないが、視覚的にキツかった（酔う）。
ともすれば激情を迸ることになりがちなテーマを、あくまで抑制された日常に軸足を定めて描いていく。そしてその在り方こそがドストエフスキー的なテーマにおいて唯一の希望の道であることを教えてくれる。それゆえ高揚も熱涙もない。
　
互いが緊張を孕みつつ接近していく様子が丁寧に撮れているとは思うのだが、いかんせん間延びしすぎである。赦しに至るプロセスが苦痛や懊悩を要するものだとして、それをほとんど同尺で観客にまで強いるのはどうか。エンターテイメントとしてもう少し凝縮された見せ方が可能なのではないだろうか。それとも、このようなシリアスなテーマにエンターテイメントを求める僕が間違っていますか？
それから邦題はミスリーディング。原題は『le fils』ですが、息子は一度も登場しません。