The Great Tube

情報というものが、抽象的で眼に見えないものでありながら、しかし、ここまで確かな実在として感じられる日々を、かつて人類は送っただろうか?
もはや食っているだけでは食っていけないのである。
消化管ではなく神経管を満たすための命。
ネットを開けばそこに無数の個が蠢く。
彼らは皆、それぞれ名を持ち、言葉を交し合う。
もし彼らに肉体が備わっていないとして、何の不都合があろう。
もはや彼らは消化管を放り捨て、神経管をコンピューター・ネットワークに接続しようとしている。
ホモ・サピエンスは、その名前に相応しい最終段階に入ったのだろうか?
        
脳科学の挑戦は、一般の想定に反して(そんな想定あんのか?)、サイバーパンク化への抵抗である。
その知識も、その言葉も、全て肉体から生み出されたものである。
あらゆる情報を大地に根付かせること。
悦ばしき知識をこの手に掴むこと。
これが脳という灰色の塊を研究することの、(僕にとっての)意義である。