日本言語学会@広島大学感想。

まず広島大学、遠い。広島まででも遠いのに、そこから更にローカル線、バスを乗り継ぎ、1時間はかかる。とにかくこんな山の中とは知らなかった。だけど、というか、だから、とてもキャンパスは広い。建物もきれい。でも、こんなところで4年間過ごせないな、というのが正直な感想。周りにろくな店がない。これは学問に集中するしかあるめえ。
一日目の午前中のワークショップは、寝坊して新幹線に乗り遅れて聞けなかった。学会参加の価値半減。
一日目午後の講演は、非常に意義深かった。
開会に当たっての広島大学学長の挨拶は、その場にいない、うちのラボのボスをべた褒めして、結構的外れな感じ。理系の学長さんだったのだが、今回の言語学会開催に当たって、うちのボスの出演したNHKの番組のビデオを見て、言語学に対する認識を改めたらしい。
そして小泉英明先生。HITACHI製作所の技術開発者として、fMRI光トポグラフィー(NIRS)の開発など重要な功績を重ね、近年は科学と教育に関する問題にも積極的に発言を行い、国際スケールで活躍していらっしゃる。とにかく、スケールがでかい、でかい。このスケールのでかさだけで、電車賃はペイした。あまり言語学会と関係ない話だった気もしなくもなかったが。
そしてBornkesselさん@MaxPlanck。先生と呼ぶべきか。先日、紹介した論文(The emergence of the unmarked: A new perspective on the language-specific function of Broca's area)のセカンド・オーサー。僕はおっさんを想像してたら、とても若い女性でした。びっくりした。どうしてこんな先入観が形作られるのか。綺麗な人でした。PC欠如ですみません。とにかくあの論文はとてもエキサイティングなものだったのですが、あの論文で提唱された仮説を裏付けるデータがもう続々と出ているみたいで、緻密な論理と精力的な姿勢に刺激を受けた。
酒井弘先生@広島大の脳波の実験も面白い。「先生のご出発」という句では「先生」と「ご」の間で[敬意]のfeatureの一致が起こる、という仮説。featureが一致しないと、P600という文法の違反と同様の脳波が観察されるという。現象としては面白いのだが、脳波そのものの持つ性質として、いまいち何が起こっているのか分からない。MEGを用いている僕も同じ問題を抱えているのだが。
今泉敏先生@県立広島大は皮肉や冗談といった文字通りの意味と実際の意味とのずれをfMRIで計測。こういった実験にしてはデザインがしっかりしていて、妥当性も高いように感じた。
小泉政利先生@東北大。今まで小泉英明先生と小泉政利先生を混同していた。同じ日に二人壇上に立っていただくと違いが非常に良くわかって、これだけで電車代はペイ。うちのラボの実験とそっくりでギクリとした。先に出版されるようで。

広島の中心部では、商店街の祭りだったようで、なかなか気合の入ったヤンキーが見られて、いい経験になりました。

二日目は口頭発表&ポスター発表。
言語学的には興味深い問題も、脳や心理の実験に落とすときに、がくんとレベルが下がる例が見受けられた。有り得ない衝撃のERPデータにBornkesselグループがよってたかって、"Unbelievable! You should not publish this data."なんて言いながらいじめていて、冷や汗半分笑ってしまった。ポスター上のグラフをものさしで計りだした時は、手加減しろよ、と。デモ綺麗ナぼんけせるサント話セテ良カッタデス。
二日間言語学にどっぷり浸かってみて思ったのは、言語学的要素と実証的実験、両方のクオリティを上げるのはなかなか難しいことだなあ、という当たり前のことでした。