川村記念美術館@佐倉市

川村記念美術館
正月休みに遠征してきました。いやあ、都心からのアクセス、かなり悪いですね。まあ逆に小旅行気分で楽しみました。入館料より往復の電車賃のほうがはるかに高いという (約 3 倍)。行きの総武線では、隣席の女の腕の中の稚児から執拗な足蹴りをくらいつつも、読書に励みました。
 
JR 佐倉駅に着いても、美術館はまだまだ先です。そこから美術館専用バスで 20 分。しかもバスは 1 時間に 1 本しかありません。駅前にはほとんど何の店もありません。コンビニ横の本屋で時間を潰しバスを待つ。コロッケの屋台に惹かれたのですが、休業でした。
(おそらく) 全員が美術展を目的に乗り合わせたバスというのもなかなか奇妙な雰囲気です。曇天の中、バスは凡庸な住宅街を掻き分け、冬の寂しげな田圃を横目に、憂鬱な音を立てて走ります。
川村記念美術館庭園
美術館は (株) 大日本インキ化学の研究所の敷地内に立っております。高原の湖畔のように小奇麗に整えられた庭園と小さなお城のような美術館の外観が僕を陰惨な気分にします。
 
そんなこんなで都心からたどり着くにはかなりの時間を要しますが、閉館時間は 4 時半と非常に早い。辿り着いたと思ったらすぐ閉館です。そして帰りの最終バスも閉館直後に出ます。これを逃すと夕暮れの佐倉の田園の中に取り残されます。閉館後、庭園をうろうろしていたら、最終バスにぎりぎりで飛び乗ることになりました。なんとか再び佐倉駅に戻ります。辺りは既に真っ暗です。佐倉駅前
 
これで帰っては佐倉くんだりまでの遠征の甲斐もない、と駅の改札に背を向け、夕闇の中、ひとり、駅から北へ伸びる道を突き進みます。月は鋭く冴え、ひどく凍みる夜でした。なぜか歩いている人間は一人もいません。駅から1kmほど北へ進み、街灯もまばらな急坂(薬師坂)を登ると、岡の上が佐倉の旧武家屋敷の町並みです。この町の武家屋敷は、道から更に高く土塁を築き、その上に生垣をもうける作りが特徴です。暗闇の中、初めて目にするせいもあって、道から土台までの高さがやけに威圧的です。馬上から屋敷内が伺えないようにする目的らしいのですが、太平の世のこと、庶民への威厳を保つ役割もあったのではないでしょうか。古くからの町並みというのはどこか白々しさがつきまとうものもですが、夕闇の中で見たせいでしょうか、妙なタイムトリップ感を味わえました。
 
武家屋敷の並ぶ宮小路を抜け、大聖院横のひよどり坂を下ります。竹林の中を抜ける、街灯の全くない真っ暗な坂道です。携帯電話を取り出して液晶のバックライトで足元を照らしながらそろりそろりと下ります。この泣きたくなるような心細さが楽しいのです。佐倉は坂の町で、この他にもくらやみ坂、うるし坂など多くの坂が景観を作り上げています。城を開く際にもこの地形が決め手になったのでしょう。
 
駅前に戻り、「餃子の王将」初挑戦。ドリンクバーやソフトクリーム・サーバーがあったりして、さながらオヤジ向けのファミレスといったところですね。餃子と八宝菜、ビール 2 杯で 1500 円とリーズナブル。後ろの席に一人で陰謀論を喚きたてるおっちゃんがいて、楽しめました。正月から佐倉で何やってんだ俺は。
 
元旦、寝酒をしていたら割ってしまった iittala のグラスを ILLUMS で買い足して帰宅。
  
佐倉城址にある国立歴史民族博物館には高校の頃、学年全体で行ったことがあるのですが、佐倉の町は素通りしてしまい残念に思っていたので、6年来の借りを返した気分でした。果たしてこれから先、僕が再び佐倉市を訪れることがあるのでしょうか?
 
God only knows.
 
 本日はゲルハルト・リヒター風に写真に Gaussian Blur をかけてみました。