今夜、どこかのバーで

 

回天

 
雨の夜、いつ来るとも知れぬ客を待ちながら

覚えたてのカクテルを流し込み

静まり返った店内で『愛のゆくえ (ハヤカワepi文庫)』を読む

 
ここは大切な思いを綴った本だけを保管する図書館

ふとドアが開いて本を携えた女の子が入ってくる

ヴァイダのような完璧な女の子

そして僕を旅へと連れ出してくれるんだ

 
そんな気分になるのだなんて

留まり続けることに少し飽き飽きしているんだろうね

ブログの書き方もすっかり忘れてしまったよ

 

何時の間にやら雨上がり

外には真ん丸お月様

お聴き、あの娘がどこかで吠えてゐる

のをあある とをあある やわあ

のをあある とをあある やわあ

 
「あの娘は病んでゐるの? お母あさん。」

「いいえ子供

あの娘は飢ゑてゐるのですよ。」