天才の作り方

                 The Creating Brain: The Neuroscience of Genius


Mark Lythgoe
(2005)

Nancy C. Andreasen『The Creating Brain: The Neuroscience of Genius』より。Natureの書評参照。
天才の秘訣とは「自由な連想を作り出す脳の『軽薄さ』」にあるそうです。洞察に大きな働きをもたらすのは、メタファーだというのは認知科学でもよく言われます。つまり一見無関係に見える二つの物事を結びつける力。ケクレがベンゼン環の構造を思いついたのは、自分の尻尾を噛みながらぐるぐる回る蛇の夢を見たから、というのは有名なエピソードです。僕も日々駄洒落にいそしんで連想力を鍛えております。
一分野の中に閉じこもって視野狭窄になっているとクリエイティヴィティは生まれないのでしょう。仕事と関係のないことをしていると無駄に時間をすごしているような気分になりますが、何かに活きてくることを祈りながら、有意義に無駄な時間を過ごしましょう。著者アンドレセンが言うには、「天才になるには多くの時間が必要です。何もせずに、本当に何もせずに、ずっと座り続けなければいけないのです」。僕の研究室での過ごし方は天才になるのに最も相応しいものであるようです。
また、天才と精神病との強い関連性に関しても述べられています。特にクリエイティヴィティと気分障害(主に鬱)との繋がりが示唆されております。これらが因果的関係にあるのか、それとも、こういった病を抱えた人たちの落ち着ける場所がたまたまアーティスティックなものであるのか、というのは未だ未解決のようです。
ともあれ、天才を作り出すのに、脳の可塑性が大きな役割を担っているのは確かなようで、無意識のレベルを支配するニューロン同士の結合を日頃から強化することが効果があるようです。著者が言うには「子供はテレビを消して、本を読み、自然を探検し、クラシックを聴くこと」だそうです。PTAのおばさんみたいですね。
今日は澤口先生みたいな感じで、ポップな脳科学に迎合してみました(笑)。ちなみに著者は脳科学者ではなく、文学を専攻していた方です。