「アインシュタインと共にダーウィンを超えよう」

                 生命とは何か―複雑系生命論序説
論理思考と認知に関する国際シンポジウム東京大学の金子邦彦教授が表題のようなでかいスケールの話をしてました。アインシュタインブラウン運動に関する考察をもとに現代の進化理論に再考を迫る内容です。
我々は表現型だけが表立った淘汰の対象と考えてしまいがちです。しかし実は遺伝子と表現型(タンパク質)とは一対一対応ではなく、そこには微動があり、遺伝子とタンパク質との相互依存の関係を考慮すれば、タンパク質からのフィードバックを通じて遺伝子そのものも淘汰圧にさらされているわけです。そう考えると表現型を通じての淘汰だけではなく、微動する表現型からの直接の淘汰もありうるわけです。さながら洗練されたラマルクといったところでしょうか。すごいのは理論だけではなく、実際に実験系で結果を出しているところです。PNASの論文は是非読もうと思いました。

On the relation between fluctuation and response in biological systems
Sato K, Ito Y, Yomo T, Kaneko K.
Proceedings of National Academy of Science of the United States of America (2003) 100(24):14086-90

フランスからの先生も質問していましたが、こういったダイナミックな関係はラングとパロールといった認知的な話題にも適用の可能性が考えられます。仮に言語システムに堅固な「形相と質量」の相互依存の関係が成り立っていれば、言語獲得における生得的能力を仮定せずともプラトンの問題は解決可能かも知れません。これこそミニマリズムです。
正月休みに本腰を入れて、積ん読状態の大著・金子邦彦『生命とは何か―複雑系生命論序説』を読みたいと思います。
それにしても毎日同じ研究棟にいる先生の話を他大でようやく耳にするというのはなんなんだろう。