ジョン・ミハイル『道徳認知の諸要素:ロールズの言語アナロジーと道徳・法的判断の認知科学』

おひさしぶりです.今年も,いや,この 5 年も,いろいろありましたが,結局のところ,図々しくも,僕は元気です.いや,あまり元気がないかもしれません.君はどうですか? このところ,道徳について考えていました.いや不道徳について考えていたといった…

ご無沙汰しておりました。

冬になると恒例のように更新が鈍るこのブログ。寒いとなかなか心が発火点を超えないのである。今日は初夏のような陽気だから。と言ったら、分かり易すぎて恥ずかしいのだけれど、事実だから、仕方がない。どうやら、この実に恥ずかしい心身を抱えた私を、何…

南へ/エルスール

id:mikk さんのところで、渋谷ビクトル・エリセの旧作が上映されていることを知り、仕事は山積しているのだけれど居ても立ってもいられなくなり、21 時からの『エルスール』上映最終回に出かける。研究棟のエントランスのドアが開くと生暖かく甘い空気が流れ…

ぼくらの住むこの世界では / The Places We Live

我々の共通場は、たとえそれが今日は何の効力がなくとも、世界を唖然とさせる諸々の抑圧の事実に対してまったく無力だとしても、世界の人々の想像界を変化させることに力があると思われる。我々が我々の身にふりかかった悲惨な状況に根本的に打ち勝つのは想…

ぼくたちの 感覚は どのようにして うまれてくるか。

Kandel, Schwartz, and Jessell (2000) 『Principles of Neural Science』 p. 22 より。 このように、 ひかりの 情報を はこぶ 信号は、においについての 情報を はこぶ 信号と おなじなのです。ここでぼくたちは 脳の はたらきの もうひとつの だいじな 原…

今夜,ある特定のバーで(ある特定の人間による観察)

日曜日からの四日間にわたる[缶詰[論文執筆]]*1にひと区切りを付け,へろへろになりながらも,とあるバーで三浦俊彦『多宇宙と輪廻転生―人間原理のパラドクス』を読んでいるわけであるが,隣席の同世代と思しき女子二人の会話へふと耳を傾けると,エレク…

たびのおとも

タビリエ 松江・出雲 (タビリエ 28)出版社/メーカー: ジェイティビィパブリッシング発売日: 2008/10/01メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 12回この商品を含むブログ (3件) を見る出雲大社 日本の美術 476作者: 浅川滋男,国立博物館(東京京都奈良九州),文…

論理が苦。克服計画始動。

哲学の授業と喫煙所でよく顔を合わせていたミスター・ロンリーもといミスター論理こと id:at_akada さんが論理学を切れ味鋭く振り回しているのを見て羨ましくなり、戸田山和久『論理学をつくる』を買った。この本をきっかけに akada さんは僕が到底届き得な…

僕の小規模な失敗

昨夜は資料集めのために初めて本郷の文学部図書館に行ってきた。読みたくても身近になかった本が地下の書庫にみっちりと背を並べていてひどく鼻息が荒くなった。こういった知識の大洪水を前にすると一生かけてもとても吸収しきれない量に絶望すると同時にわ…

個人英雄

太宰治「花燭」より 自身の行為の覚悟が、いま一ばん急な問題ではないのでしょうか。ひとのことより、まずご自分の救済をしてください。そうして僕たちに見せて下さい。目立たないことであっても、僕たちは尊敬します。どんなにささやかでも、個人の努力を、…

厭けました。

年末から論文執筆に明け暮れており、三日不眠で半日眠るというような滅茶苦茶なサイクルで生きていたために(16÷3.5)でまだ一月五日ほどの気分。新年の挨拶にはまだ遅すぎず。実にお目出たい。 作家が身を削りながら執筆に励むというエピソードには、たかだか…

坂本龍一×小林康夫「音楽はどこにある?」

ふたりの対談が授業の一環で構内で催されることをたまたま知って聴いてきた。 僕は YMO 後のものは細野晴臣をメインに聴いているのであまり良い聴衆ではなかったかもしれないけれど、一流の音楽家の頭の中を生で覗き込む経験は非常にためになった。以下簡単…

悲しいだけ

文化の日記したものを加筆修正す。 今日は久々に夜まで予定の空いた日であったから、文化の日らしく映画を見ようとか、デザインタイドにでも出掛けようかなどと前日からあれこれ考えていたのであるが、結局十一時頃宅配便に起こされ、しかし、再びベッドに戻…

脳の中の代数学者

ゲアリー・マーカス Gary F. Marcus 『心を生みだす遺伝子』は最新の分子脳科学の知見から精神の発生学に挑んだ良書だった。同著者の 『The Algebraic Mind』 はどうやら翻訳は出ていないらしい。コネクショニズムと記号操作モデルを比較的フェアに比較して…

イアン・ハッキング『何が社会的に構成されるのか』理論編Ⅰ

半年前に読んで記憶から消えかかっていたが、id:boy-smithさんに薦めてみた手前、再読。写真は5月に道志川キャンプ場で行われたNatural High!という野外音楽イベントでのもの。 『記憶を書きかえる―多重人格と心のメカニズム』、『偶然を飼いならす―統計学と…

頭痛は頭痛もち 物理主義は汎心論を含意するか

Galen Strawson らによる論文集『Consciousness and Its Place in Nature: Does Physicalism Entail Panpsychism?』 に対する Jerry Fodor の書評 "Headaches has themselves" (London Review Bookshop) を翻訳しちゃった。追記: 『Consciousness and Its Pl…

本日の古本@研究室

研究室を去る同学から B.Partee ら『Mathematical Methods in Linguistics』と守屋悦朗『形式言語とオートマトン (Information Science & Engineering)』を合計2000円、格安で譲り受ける。

カンデル積んでる。

昨年、北海道のイベントで知り合った野澤くん (名前出しちゃっていいんですよね?) のサイトをご紹介。 melonsode.fem.jp 僕も昨日見つけたばかりで全部のコンテンツを探検したわけではないんですが、神経科学の教科書の決定版、カンデル Eric R. Kandel *1…

本日の古本@河野書店

飯田隆『言語哲学大全Ⅰ 論理と言語』 ¥1500にて。 このシリーズ、4巻もあるのか…。果てしなく長い道のりだな。次のターゲット本は現代思想のヴァレラ特集。ヴァレラの論文の翻訳がいくつも。涎出てきた。それから書き込みありとはいえミンスキー『心の社会…

脳科学の内部観測

『現代思想』10月号は「脳科学の未来」が特集。 茂木健一郎+郡司ペギオ幸夫+池上高志の討議がトップ。 脳科学の特集なのに、この三人を主席に据えるところが、さすが青土社というか、なんというか。いや、すごい面白いんだけれど。巻頭エッセイを任された竹…

本日の古本(河野書店@駒場)

心はどこにあるのか (サイエンス・マスターズ)作者: ダニエル・C.デネット,Daniel C. Dennett,土屋俊出版社/メーカー: 草思社発売日: 1997/11メディア: 単行本購入: 3人 クリック: 8回この商品を含むブログ (15件) を見る¥900 高校の頃から読んでいたサイエ…

意味と形式の狭間で

新しい実験の刺激文*1作りのために月曜日から言語学の先生と一緒にミーティングを重ねている。 見たい効果は統語すなわち文法形式なのだが、言語である以上、そこに意味が付帯する。意味の要素が見たい効果を打ち消したりしないように、様々な状況をイメージ…

Casa Brutus 2006年9月号

知らないと恥ずかしい! 日本建築デザインの基礎知識。 数奇屋、枯山水、千利休…、あなたはニッポンをきちんと説明できますか? これはすごい! 寺社仏閣とか城とか、好きで、よく周るのだけれど、実は日本の建築に関する基礎教養が全くなかったのです。 本…

村瀬学『自閉症―これまでの見解に異議あり! (ちくま新書)』

久しぶりに興奮した新書。 専門の関係で自閉症を扱った脳科学論文はちょくちょく目にする。結構流行っているような気がする。自閉症研究への予算投入は増加しているらしい。それから心理学のほうでも、「心の理論の欠如」だとか「超システム化傾向」だとか、…

先週のScienceからピックアップ。

向こうの最新の雑誌で紹介された本って、ほとんど日本の amazon で手に入るんですね。 しかし Science みたいに書名ばかり羅列するよりも、画像を載せると俄然購買欲が沸きますな。おそろしや。Hard Science, Hard Choices: Facts, Ethics and Policies Guid…

うお!

魚!昨日テレビで見ましたが、パプア・ニューギニアの囚人魚ってのはすごいですね。親が海底に巣を作って何千匹もの子供と同居するという。親魚が子魚を飲み込む現象の説明として、「子供が親にエサを与えている」ってのはちょっと半信半疑ですが。あれは本…

鉄カーテンの楽園論

藤森かよこ編『クィア批評』の序論をとりあえず読んだ。 問題は、多数派に承認されることではなく、多数派の是認などなくとも少数派が生きることに支障のない環境の整備だ。すべての価値を多元的に認め合う人々が共存する寛容な社会を形成することは、私の人…

藤井直敬『予想脳 Predicting Brains』

読書中(p.1-41)。簡潔な記述ですらすら読める。帰宅の電車内で読み終わりそう。とはいえ、かなり面白いことを言っている。詳細な実験結果から積み立てていくボトム・アップの議論ではなく、トップダウンの仮説概念を元に書かれたものなので、ところどころ飛…

僕らの青春をおおげさにゆうのならば。

近代文学とは「青春」の発見/創出であった、とする三浦雅士『青春の終焉』には非常に賛同するところです。ところが「青春小説」とは(こないだ書いた『小さな恋のメロディ』みたいに)基本的には学校・社会などの権力に対する抵抗の物語なので、フーコー的…

村上春樹恐怖症=青春という亡霊への憧憬?

友人のLisbon22くんが3月25・26日に行われる『春樹をめぐる冒険―世界は村上文学をどう読むか』というシンポジウム・ワークショップに誘ってくれたので楽しみ。 そういえば僕が大学に入る前に「大学生」のイメージを決定付けたのは『ノルウェイの森』だった(確…