老いてなほ

新宿センタービル前で24:30発の夜行バスを待つ。広場で同じようにバスを待っている人たちは、みな十代後半から二十代そこそこで、つまり大学生ぐらいの人たちが多い。この中では僕は年輩に属するのだろう。僕が乗るバスは新宿〜大阪の運賃が4200円であり、これは最安の価格帯だからもっともだ。もう五歳も年をとれば僕は場違いな人間になる。
僕はウェルベク『素粒子』やクッツェー『恥辱』に描かれた老年の性欲の無惨に思いを馳せずはにはいられない。なにせ僕の貧乏旅行への愛着は一種の因果なフェティシズムなのだから。
バスは中央高速に入った。車内でビールを開けるような人間は僕一人のようだ。後部座席から生卵を投げつけられる日もそう遠くはないだろう。