量子NO!

昨日のエントリの killhiguchi さんのコメントに関連して。
数年前、大学の図書館の蔵書整理の際、廃本のところにあった*1ので


SGCライブラリ 25 臨時別冊・数理科学2003年7月
「量子場脳理論入門」
〜 脳・生命科学のための場の量子論

高橋 康 監修 保江邦夫 著

定価:1,970円(本体1,876円+税)
発行:サイエンス社

をもらってきた(著者は治部眞里の共同研究者)。が、まったく手をつけていないし、これから手をつけるつもりもない(笑)。本棚のスパイスという認識で…。
なんどかぱらぱらとめくってみたが、4 章仕立てで、最初の 3 章は場の量子論に関する記述で、脳に直接言及するのは最終章。少し引用すると

確かに、量子力学は微視的なスケールでだけ通用するのだが、場の量子論は微視的スケールと巨視的スケールの両方に通用するのだ。…脳も巨視的物質であるからには、好むと好まざるにかかわらず、前章で紹介した場の量子論的自然観や量子電磁力学の枠組で捉えなくてはならない。…従って、ニューロングリア細胞の近傍で繰広げられる物質現象を統一的に記述するためには、微視的スケールでの原子分子から巨視的スケールでの細胞構造にいたるまでを統一的に論じることができる場の量子論の枠組が必要となってくる。

らしい。僕は場の量子論を専門的に学んだことがないので、この本の妥当性については留保したい *2。しかし「ある物理的スケールの現象には理論 A が適用可能である」ということから即「ある物理的スケールの現象の説明には理論 A の適用が必要不可欠である」ということには繋がらないことに注意したい。でなければあらゆる分野の科学は Theory of Everything 「究極の統一理論」 *3で語られねばならなくなってしまう。ビルの建設に必要なのは TOE でも場の量子論ではなく、ニュートン力学なのである(たぶん)。重要なのは現象のレベルに適した説明の枠組みを見極めることだ。
いかんせん、この本の内容は僕が関わるべき仕事ではないですし、入手困難になっているようですので、欲しい方がいらっしゃればお譲りします。
 
…それにしてもサイエンス社も懐が広いなあ。フリンジ・サイエンス社とかプロト・サイエンス社ではないところがポイント。

*1:(笑)

*2:検証する意思のない留保は無視と同じことではないだろうか

*3:あるとせば