大阪春の靭

朝、7時半に梅田着。寝呆けた頭のまま PRONTOカプチーノとハムエッグトーストの朝食。一服してようやく目が覚める。どうやら深夜バスではトイレ休憩も含め、一回も目を覚まさなかったらしい。初めての経験。場違いな人間になってゆくに従って、図太さも増してゆく。
御堂筋線千里中央へ移動。駅から会場まで、ずっとマンションに沿ったぺデストリアン・デッキが続き、一度も地に足がつかない。新興住宅地のこういった作りが苦手だ。
9時から17時まで、口演発表。個人的には伊佐先生のサッケードの話がとても面白かった。今までサッケードという現象自体の面白さを全くわかっていなかったのだなあ、と残念に思う。ごめんなさい、pooneil さん。サルで盲視モデルを作り、盲視側におけるサッケードの精度を分析する。盲視側のサッケード精度の低下の原因は運動系にあるのか視覚系にあるのか。普通だったらここで常識的に視覚の精度が悪いからだ、と結論付けてしまいそうだけれど、サッケードの軌跡を見ることで、盲視側では初期の運動エラーの補正が行われていないのではないか、という疑いが生まれる。V1を破壊しただけなのに、なぜ運動系にまで影響が出るのか、というのは面白い問題だ。ただ今思ったのは誤差の検出自体がうまくいっていないのだとしたら、内部モデルがきちんと働くはずはないよなあ、ということ。そうすると再び、視覚系の問題に帰着するのだろうか。う〜む。鍋倉先生の 2-photon imaging の映像もすごかった。ほとんど素人的な感慨だけれど。ヘンシュ先生の臨界期ネタは興奮したのだが、もうちょっと勉強しないと付いていけない。
で、僕自身はその後のポスター発表。最新の解析結果を出せなかったので、大して人が来なかったこともあまり悔しくない、という態度が、どうかと思う。早く今の仕事をまとめねば。
ミナミで串カツ屋。生ビールと7本で1000円。安いなあ。腹がたまったところで、銭湯マニアとして、新世界の銭湯を探す。通天閣のすぐ傍のラジウム温泉は次回に回し、細い裏道にあるパーク温泉に挑戦。番台が真ん中にあり玄関のほうを向いているクラシック型。脱衣所の壁には演芸やポルノ映画のポスターが張ってある。湯船は浴場の中心にやや深めで熱い浴槽があり、端には岩風呂に模した小さな浴槽がもうひとつ。こちらは電気風呂として機能するような記述があったのだが、ぬるい薬湯が張ってあっただけだった。全体としてはいまひとつだけれど、土地柄と合わせてレトロな感じを楽しむことができ満足。番台のおじさんがとても感じの良い方だった。
深夜バスは24:30出発でまだまだ時間があったので、新世界から梅田まで歩くことにする。空気も暖かく、散歩には最適。途中なんばのブック・オフで大江健三郎洪水はわが魂に及び』の箱入り初版本を上下合わせて550円で入手。なんば駅前のストリート・ライブはやたら音がでかいが、ツェッペリンみたいでなかなかかっこいい。音に合わせて御堂筋を直進。閉店後のジルボーの店内を覗き込んで、壁面にシダ植物を這わせたインテリアを観察。変なの。村野藤吾設計のそごう百貨店とか、黒川紀章設計のソニービルとか、この辺りは新旧合わせてなかなか見所がおおいのだけれど、あまりゆっくりもしていられないのが残念。見たい神社はみな閉まっている。途中のバーで焼酎を一杯ひっかけ、あとはひたすら歩く。バスが待つ大阪中央郵便局は、東京中央郵便局と同じ吉田鉄郎設計。ふう。到着。
というわけでまたもビールを買い込み慌しく大阪を去る。窓際の席だったのだけれど、カーテンの向こうから妙に冷たい空気が流れ込んできて、何度も目を覚ました。どこかの窓がわずかに開いていたに違いない。
夜行バスは予定より30分早く新宿に着いたが、早朝喫茶に寄る金はなし。そのまま研究室へ直行。