ブローカ野と言語:新たな提唱①

The emergence of the unmarked: A new perspective on the language-specific function of Broca's area
Tanja Grewe, Ina Bornkessel, Stefan Zysset, Richard Wiese, D. Yves von Cramon, and Matthias Schlesewsky
Human Brain Mapping (2005)

ブローカ野の主な機能として文法処理が挙げられるが、一方、ワーキング・メモリや運動の知覚などでも活動が生じることが分かっている。
文の構成要素の順序を入れ替えた文(e.g. 英語のSVO→O,SV)では、その文法処理の複雑さに伴ってブローカ野の活動が高まることが知られている。しかし、順序を入れ替えた文は、文法的な複雑さが増すのに伴い、出現頻度、容認度なども変化する。そのため、ブローカ野の活動の上昇が、文法処理の複雑さを反映しているのか、ワーキング・メモリなど一般的な認知活動を反映しているのかが不明であった。
そこで著者らはドイツ語の組み換え文を用いた。ドイツ語では、規範的な構文はSOV*1とされているが、「代名詞は非代名詞に先行する」という規則があるので、目的語が代名詞ならばOSVの構文も認められる。よってドイツ語を言語刺激として使えば、頻度や容認度などの要素が統制できる。

(続きは)

*1:訂正。SVOって誤解してました。ドイツ語知らないんです